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カーボンリサイクルの現在地と未来を展望
―CRERCがシンポジウムを開催

 茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)は6月12日、カーボンリサイクルの現在地と未来について考えるシンポジウムを日立キャンパスとオンラインで開催しました。シンポジウムでは、国内の研究動向やCRERCの研究成果について発表があり、参加した計210人が理解を深めました。

シンポジウムの様子

 2023年に設立されたCRERCでは、CO₂の「回収」、回収したCO₂や水素などを利用した新たな燃料の「合成」、それらの燃料の安全で効率的な「利用」の3つの柱を一気通貫した研究・技術開発に取り組んでいます。開会にあたり、田中光太郎センター長は、「まずは5年を区切りに成果を出したい」と話し、設立5年にあたる2027年度は「学内でカーボンリサイクルの実証ができるよう準備を進めていく」と構想を語りました。

CRERCの田中光太郎センター長
CRERCの田中光太郎センター長

 基調講演では、同志社大学カーボンリサイクル教育研究プラットフォームの渡邉崇准教授が、合成燃料技術の歴史と将来展望、同大の教育について講演しました。
 渡邉准教授は、合成燃料が100年以上にわたり研究が続けられてきた技術であることを紹介。その時代ごとの社会課題を背景に研究が進められてきたと説明しました。中でも、南アフリカの化学企業サソル社による商業化事例を紹介しながら、合成燃料が実際に社会で利用されてきた歴史にも触れました。
 合成燃料を取り巻く価値観や期待される役割は時代とともに変化していて、かつては石炭資源の有効活用やエネルギー確保が主な目的でしたが、現在は気候変動対策やカーボンリサイクルの実現が大きなテーマとなっています。その中で、「技術開発の上で『どのような目的で技術を開発するのか』『どこを目指して技術を使うのか』を考えられる人材の育成は非常に重要だ」と話し、同大の教育についても語りました。

同志社大学リサーチ・イノベーション推進機構渡邉崇准教授
基調講演をした同志社大学リサーチ・イノベーション推進機構渡邉崇准教授

 続いて、応用理工学野の境田悟志准教授が、「湿度スイング吸着法によるDirect Air Capture~吸着材開発からモデリングまで~」をテーマに研究発表。Direct Air Capture (DAC)とは、大気中のCO₂を直接回収する技術です。湿度スイング吸着法(MSA)は、水を用いて常温でCO₂回収・分離できることが特徴です。
 境田准教授らは、吸着材内部で起こる物質の輸送に着目し、吸着速度と吸着量を両立する材料開発を進めています。「『良い素材を作るというだけでなく、いかに使える形のものを作るか』に焦点を当てている」と繰り返し、材料開発だけでなく、シミュレーションモデルや装置開発も含めた実証にも取り組んでいくと話しました。

境田悟志准教授
境田悟志准教授

 回収したCO₂は、合成ユニットが開発する触媒プロセスにより、水素と反応させてメタノールなどの液体燃料に変換します。「この『水素』はどこからやってくるのか。それが一つの大きな課題」と話すのは応用理工学野の長川遥輝助教。「太陽光駆動型光触媒反応による廃棄物処理を伴う水素製造」と題して研究発表をしました。水素の製造方法をいくつか紹介しつつ、「作る過程でCO₂を排出してしまっては本末転倒。限りある化石燃料もできるだけ使いたくない。そこで注目されるのが太陽光」とし、太陽光をエネルギー源として利用する光触媒反応に着目した背景を語りました。光触媒は、光エネルギーを利用して化学反応を起こす半導体材料で、水から水素を生成することができます。ただし太陽光変換効率は高くなく、実用化にいたっていません。還元剤として有機物を反応系に加えると効率を上げることができますが、結局CO₂が排出されてしまいます。
 そこで、食品残渣や植物由来バイオマス、廃プラスチックなどの可燃性廃棄物を分解しながら水素を製造する「光改質反応」の研究も進めています。この技術では、水素を生み出すと同時に、廃棄物を有機酸などの化学原料へと変換することができます。
 「光触媒反応によって可燃性廃棄物を分解し、処理に伴う負担を軽減するアプローチは、経済的にもエネルギー的にもプラスに働く。さらに投入した廃棄物は反応系内で還元剤として働く」とし、「一石二鳥の技術」と説明しました。

長川遥輝助教
長川遥輝助教

 最後に、倉本繁理事・副学長は「本学は掲げる『総合気候変動科学』のもと、CRERCだけではなく他の研究センターとも連携しながら、全学的に新たな分野を切り拓いてほしい」と期待を寄せました。

登壇者の集合写真

研究者の情報

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